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【第1491回】『ある少年の告白』(ジョエル・エドガートン/2018)


 ホーム・ビデオに映る無邪気な子供の笑顔、裕福な家庭では優しい両親が彼に語りかける。絵に描いたような幸福な核家族の光景。アメリカ・アーカンソー州の教会、保守的な彼の父親マーシャル・エモンズ(ラッセル・クロウ)はバプティスト教会の牧師であり、光り輝くようなブロンドの美しい妻ナンシー(ニコール・キッドマン)がいる。裕福な家庭、健康な両親に見守られたジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は順風満帆な成長を遂げるかに見えたが、そこに落とし穴が待っていた。自分は男性のことが好きだと気付いた時、両親に勧められたのは同性愛を治すと言われる強制的なプログラムへの参加だった。口外禁止だという衝撃的なプログラム内容。外部との通信手段である携帯電話は没収され、メモ帳に書いたポエムでさえ邪推され、破り捨てられる。そんな刑務所と並ぶような自由を奪われるプログラムが1980年代に現存していたことにまず驚く。
 
 アメリカの地方のセクシャリティ・マイノリティが味わう恐怖は、じわじわとした心底厭な描写で主人公を追い詰める。その卓越した非凡な描写力は、まったく毛色の異なる処女作『ザ・ギフト』とも通底する。実際に今作ではジョエル・エドガートン自身が、主人公ジャレッドを監視し続けるトレーナーのヴィクター・サイクスを演じている。コンバージョン・セラピーと呼ばれる矯正治療は、科学的根拠のない治療だが、自身も同性愛者であるというヴィクターの主張は巧妙に少年たちをねじ伏せていく。その犠牲者となった青年は心底気の毒だが、胸に巨大な重石を抱えたルーカス・ヘッジズの闘争は不器用だが素晴らしい。それと同時に今作はLGBTQの息子を抱えた両親の苦悩と闘争でもある。自由を奪われる恐怖と闘う息子を抱える親も共に闘い、仮初めの親子は真の親子になる。エンドロールで出て来た本当の父親とラッセル・クロウの激似ぶりにも心底驚いた。

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6/14(金)21時〜ミヤラジ77.3FM『We Are Movie Lovers.』は、
『貞子』公開記念!! ジャパニーズ・ホラー特集!!

映画ライターのミナミくんとサブカル好きOLノザワさんを呼んで
ジャパニーズ・ホラー誕生以前から現在までの歴史を振り返ります。

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