【第18回】『悪魔の呼ぶ海へ』(キャスリン・ビグロー/2000)

キャスリン・ビグローという人は
近年では『ゼロ・ダーク・サーティ』や『ハート・ロッカー』のような
ゴリゴリの戦争アクションのイメージがあるが、
もともとの資質というのは、ジャンルの境界が白濁とした映画を撮る監督だと思う。

この作品も一見して、これというジャンルを言い当てるのは困難を極める。

海洋サスペンスの流れから、ホラーの要素も感じることが出来るし、
現在と100年前が交差する展開で、
100年前はまるでヨーロッパの文芸映画を見ているような錯覚に陥る。

海洋サスペンス、パニック・ホラー、文芸作、ラブ・ストーリー
それら全てが一度にやりたくて、一つの映画に強引に合体させようとするから厄介である。

その組み合わせがはまればなかなか骨のある作品にもなるし、
それが極端にはまらなければ今作のように消化不良のまま終わってしまう。

もともと彼女の両親がノルウェーから遠くアメリカの地を踏んだ移民で
ビグローとしては自らのルーツを探る旅でもあるのだが、
それにしてはノルウェーらしさがあまり活きていないし、
100年前の物語も謎解きのための物語に終始していて実に残念である。

クライマックスの荒波にもまれる船の緊迫感も今ひとつだった。
要は肝心な全体ショットが一つあれば良かったのだが、
それがないから、そこで何が起きているのかがいまいちわかりかねる。

元パートナーの『アビス』にも
『殺人魚フライングキラー』にさえもまったく及ばない。

そもそも波に溺れたところで、
人間の息継ぎというのは持ってせいぜい1分といったところだろう。

それを3分も5分も無駄に長く引っ張るから、状況が活きない。

ショーン・ペンは迫真の演技とは行かず、あくまで流し気味の軽装風。
キャサリン・マコーマック、サラ・ポーリーは決して悪くないのだが、
それぞれのキャラクターを魅力的に描いていないから、いまひとつ乗れない。

その代わり、キス・シーンとラブ・シーンは緻密に丹念に描いている 笑。
ドス黒いアクションや男性顔負けの猟奇ホラーの中にも、
男と女の交わりは欠かせないのがキャスリン・ビグローらしい。

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