【第17回】『旋風の中に馬を進めろ』(モンテ・ヘルマン/1965)

4年ぶりくらいに観たが、やはり何度観ても素晴らしい。

若き日のジャック・ニコルソンが
主演だけでなく脚本も担当したオルタナ西部劇。

低予算B級西部劇を作るヘルマンの職人としての才能と
売れない役者の野心とがぶつかり、とんでもなく火花を散らした82分間。

いきなり縦の構図でスタートするあたりも痺れるが、
タイトルバックで馬と馬の間のアップが出て来た時は本気で卒倒しそうになる。

B級プログラム・ピクチュアを作らせたら
コーマン門下生のヘルマンの右に出るものはなかなかいない。

バジェットから逆算して、導き出された答えがこの映画なのだ。

エキストラを雇えないから、町も酒場も酒場のセットも出て来ない。
広大な土地を自由自在に行き来したいところだが、それでは早撮りが出来ない。

それで導き出されたのが縦の構図になる。
明らかにアクションに不向きな崖の上と下で執拗にショットを切り返し続ける。

途中、ヘルマンお得意の炎が出て来るが、それとて丸太小屋一つを焼いたに過ぎない。

お尋ね者と自警団の追いつ追われつの物語は、西部劇の従来の型通りと言えるが、
ニコルソンとヘルマンは主人公たちを、自警団に強盗と間違えられた男たちに設定する。

正義でも悪でもなかったごく普通の人々が
いきなり悪役に間違われ、一歩逃げ出した瞬間から追われる者へと変貌する。

そんな馬鹿な話があるかよと思うが 笑、これぞ映画じゃないか。
出鱈目を愛するヘルマンのB級活劇なら、どんな設定でも許容される。

仕方なく逃げたニコルソンたちの前に現れたのが、老夫婦と世間知らずのその一人娘。
この一人娘がキレイなのに、圧倒的に華がない 笑。

名前はミリー・パーキンスというB級女優なんだけど、
この映画の他にも『銃撃』とか『コックファイター』など
初期のヘルマン作品の常連だった美人なのにまったく愛嬌のない女優さん 笑。

昔拝見した『銃撃』のスチールでは、自然な笑顔が印象に残ったが、
概してフィルムの中ではそのように映らない女優と言えるのかもしれない。

このミリー・パーキンスには随分歳の離れた父親と母親がいて 笑、
前半に出て来た炎上した丸太小屋よりも遥かに小さいあばら屋に一日中住んでいて 笑、
そのあばら屋と庭の往復をおやじにわざわざ2回繰り返させる憎い演出をしている。

まず1回目でこの家族のルーチン化した日常の風景を見せたところで、
2回目に決して求められていない訪問者の到着を描く。

省略に次ぐ省略、制約を逆手に取った演出を続けておいて、
大事なところでは同じ一連の動作を2度繰り返してみせる。

このあたりがヘルマンのしたたかな職人魂炸裂といったところだろう。

当時は酷評に次ぐ酷評で、ジャンルのゴミ箱に無造作に捨てられた映画だったが
今や生きる伝説となったヘルマンのB級西部劇。

しっかり拾い上げられ、ようやく陽の目を見た。問答無用の大傑作。

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