【第725回】『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(ティム・バートン/2016)

あらすじ・結末に触れていますので、これから観る方はクリックしないで下さい
 

【第13回】『エド・ウッド』(ティム・バートン/1994)

久しぶりに観たけど、やけくそになって入った酒場で
敬愛するオーソン・ウェルズに出会うシーンは何度観ても素晴らしい。

実際はこんなシーンはなく、
ティム・バートンの完全な創作だったんだけど、
ベラ・ルゴシに出会い、オーソン・ウェルズに会えた時点で
エド・ウッドは幸せな男だったんじゃないかと感じさせてくれる
フィクションとしての圧倒的な素晴らしさがそこにはある。

自伝的物語というのは、努めて冷静に脚色するのも1つの方法だけど、
エド・ウッドに対する愛情だけで1本の映画を作るのもこれまた1つの方法論。

晩年は金に困ってポルノ映画に走ったり、酒浸りで酷い生活を送った人だが
そういう部分は一切描かず、初期の映画への溢れる情熱のあったエド・ウッドにスポットを当てる。

あくまでファンタジーに近い人物としてコミカルに描くから心地よいのだ。

また脇役の役者たちの描き方も実に素晴らしい。
それぞれのディテールとか女同士の嫉妬心とか監督と制作会社の軋轢とか
深入りしない程度にしっかりと説明するからこそ、映画が活き活きとしてくる。

映画撮影の内幕を描いた映画は
トリュフォーもゴダールもフェリーニもヴェンダースもウディ・アレンも
何でこんなに素晴らしいんだろうと思う。

フィクションとノンフィクションが混在し、妙にリアルな場面もある。
1本の映画の中に様々な苦悩や葛藤があり、
出来上がった映画に感情移入し、1人の観客として涙する。

ジョニー・デップも良いが、
何と言ってもベラ・ルゴシ役のマーティン・ランドーの哀愁ある演技が素晴らしい。

葬儀屋の棺桶の中でエド・ウッドに初めて出会い、
自分の家まで何度も送り迎えさせるのだが、
その度に垣間見える人間としての侘しさに心打たれる。

このランドーという人は真っ先に『ウディ・アレンの重罪と軽罪』の演技が思い出されるが、
『エド・ウッド』も彼の生涯の代表作と言っても過言ではないと思う。

映画作りのために初めてスタジオを訪れた時に、
ギャラの交渉をする場面の演技なんて実にさりげない。

家に3人の子供がおしかけ、
ドラキュラになって追い返そうとする場面などは
明らかにバートンの脚色だが、妙に心に残る味わい深さがある。

そういう役者の上手さを引き出すところも、全盛期のバートンの力量だった。

本日公開の『ビッグ・アイズ』の予告編を観て、バートンのフィルモグラフィの中で
真っ先にこの『エド・ウッド』だけは振り返らなければならない気がした。

才能はないが、アートへの情熱は人一倍で口だけは達者なところが、
『エド・ウッド』と『ビッグ・アイズ』の主人公の共通点で、妙に親和性を感じてしまう。

ジョニー・デップとの近年の連作のようなフィクションの人物ではなく、
かつてアメリカに実在したアート作家を描いているところも近いのではないか?

あくまで予告編を観た管理人の主観なので、関連性がなかったらごめんなさい。

ただ『バットマン』『シザーハンズ』『エド・ウッド』の頃のバートンの輝きをもう一度
と思っている元バートン信者は多いはず。かくいう私もその1人なのだ。

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