【第554回】『ミュータント・タートルズ』(ジョナサン・リーベスマン/2014)


 ニューヨークの高層ビル街、ブルックリンの街並み。レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテルロと名付けられた若きミュータント・タートルズの4兄弟は、父親であり、「先生」でもあるスプリンター(ダニー・ウッドバーン)の教えを忠実に守り、まだ修行が未達であるとして地下での生活に甘んじていた。彼らはアメリカのPOPカルチャーに憧憬の念を抱きながら、ニューヨークの街の治安を守る日を夢見て、研鑽に励んでいた。一方その頃、シュレッダー率いる悪の組織「フット軍団」はニューヨークにテロの嵐を引き起こしていた。エイプリル・オニール(ミーガン・フォックス)は遺伝子研究に利用される薬品のブルックリン港での盗難事件を追っていた。彼女のジャーナリスト魂に日がつき、港の警備員にヒアリング調査を行うが、答えは芳しくない。彼女はチャンネル6のレポーターとして、安易な特ダネよりも骨のあるネタに飛びつく生粋のジャーナリストであり、「フット軍団」の卑劣な行いを未然に食い止めた謎の4人組の姿を偶然にも目撃する。一大スクープをゲットしたエイプリルは、局長のバーナデット・トンプソン(ウーピー・ゴールドバーグ)に打診するも取り合ってくれない。そのため独自取材を始めたエイプリルは、彼らが4人組で驚異的な身体能力を持つしゃべるカメたちであることを知る。

1990年代に3部作で大ヒットを記録した『ミュータント・タートルズ』 シリーズのリブート版。2007年のアニメ版『TMNT』ではシュレッダー打倒後の世界が描かれていたが、今作では再びシュレッダー率いる「フット軍団」vsミュータント・タートルズの正義と悪の構図となる。エイプリルにはかつて大企業の研究者として活躍した父親オニール博士(ポール・フィッツジェラルド)がいたが、不慮の事故により失っている。彼女は当初、ジャーナリストの使命として『ミュータント・タートルズ』 そのものに近づくが、図らずもそこでタートルズと幼き頃の自分との因果関係に気付いていく。メンターであるスプリンターとミュータント・タートルズの関係性は『スター・ウォーズ』シリーズにおけるマスター・ヨーダとルーク・スカイウォーカーの関係そのものであり、敵役であるシュレッダー(トオル・マサムネ)の造形もダースベイダーそのものである。今作は従来の正義と悪の簡単な図式には収まらない21世紀のアメコミ・ヒーローものの流れは汲まず、あえて20世紀的な正義vs悪の構図で挑む。父親の盟友であり、今は父の会社を引き継いだエリック・サックス(ウィリアム・フィクナー)に機密情報の相談をしたことで、地下で修行を続けるミュータント・タートルズ一同は一転してフット軍団の恐怖に晒される。それと共にエイプリルは父の死に関するある秘密を打ち明けられるのである。

レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテルロそれぞれのキャラクター分けやエイプリルとの関係性を含め、今作はあくまで序章のような体裁を取っている。メンターの危機、ヴァーン・フェンウィック(ウィル・アーネット)とのロマンスの行方を伏線に置きながら、シュレッダーのニトロエタン奪還計画を軸に物語は繰り広げられる。地下という密室内でのCGアクションから一転して、大企業サックス社の庭のような雪山で繰り広げられる高低差のある滑り台アクション〜下水管の侵攻を経て、クライマックスに訪れる高層ビル屋上のアンテナを巡る死闘は息を呑む。シュレッダーと4兄弟とは1対1ではまるで勝負にならないが、レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテルロの4兄弟のコンビネーションが奇跡を生む。ロバート・ゼメキスを意識しただろう落下型のVFXアクションは重力の視覚効果を多分に意識しながら、タートルズの面々をアクロバティックに動かすことで静と動のメリハリをつける。『デッドプール』で流れたGeorge Michaelの『Careless Whisper』のアイデアはおそらく今作が元ネタだろうし、『トランスフォーマー』シリーズに並ぶクラシックなヒーローものとして繰り広げられる勧善懲悪な物語は安心感がある。

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