【第679回】『バイオハザードII アポカリプス』(アレクサンダー・ウィット/2004)


 アメリカ合衆国ラクーンシティ郊外に位置するアンブレラ社の地下研究所「ハイブ」、絶対に出られない堅牢な密室の怖さを味わったアリス・アバーナシー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)はようやく記憶を取り戻し、脱出したかに見えたが、何者かに羽交い締めにされ、マット・アディソン(エリック・メビウス)とは別の施設に送られる。バイオハザード発生から2日後、汚染は研究所内部で食い止められたため、その真上にあるラクーンシティでは住民達がいつもと変わらぬ平穏な日々を送っていた。だがアンブレラ社の社員が開けた入り口からクリーチャーが次々と街へと流れ出る。起こるべくして起きた新たなる危機。ゾンビが街中に溢れ出し、壊滅状態になる中事件の隠蔽を図るアンブレラ社は、CSAやU.B.C.S.を派遣してラクーンシティを封鎖。街の外へ出るゲートに向かう避難民の中から感染者が発生した事実を受けて、感染拡大阻止のため別の手を打つことを決定した。一方その頃、深い眠りについていたアリスは突然悪夢のような声を上げ、目覚める。誰もいない白い部屋、彼女の両腕には無数の注射針が突き刺さっているが、彼女は引っこ抜き、ラクーンシティへと出て行く。誰もいないメイン・ストリート、引っくり返った車、「死者が歩く」と一面に書かれた新聞紙。アリスは何か手がかりを探すために、ラクーンシティの中心地へと歩き始める。

 『バイオハザード』シリーズ第二弾。前作では記憶を失ったヒロインが、地下研究所「ハイブ」に閉じ込められる密室の恐怖を描き、ジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』のようなパニック映画+モンスター映画になっていたが、今作で2日間の昏睡状態から目覚めたアリスは最初から超人的な力を手にしている。前作では特殊部隊の陰に隠れ、自分からは行動に出ることのなかった彼女が、自分に細工をした組織の思惑を探るべく街へ繰り出す。映画は彼女の視点だけでなく、ゾンビたちが彷徨うラクーンシティから決死の脱出を試みる複数の集団を捉える。1つは軍に見捨てられたU.B.C.S.隊長のカルロス・オリヴェイラ(オデッド・フェール)と部下のグループ、もう1つは謹慎中のS.T.A.R.S.の若き女性隊員ジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー)とペイトン・ウェルズ(ラズ・アドティ)、それにシティ内部の取材を試みたTVキャスターのテリ・モラレス(サンドリーヌ・ホルト)の一団である。それとは別に一匹狼の黒人ロイド・ジェファーソン・ウェイン 通称LJ(マイク・エップス)がこの恐怖の状況をユーモアに変えるべく奮闘する。その中でも今作で一番の存在感を放つのはジル・バレンタインの魅力であろう。夜の闇の中、ゾンビに噛まれるのも厭わないセクシーな衣装で登場したジルのゲームから飛び出して来たようなリアリティは、まさにアリスと人気を二分するシリーズのメイン・キャラクターとして物語世界に欠かせないものになった。

 密室の恐怖を伝えるパニック映画+モンスター映画から、街の中へ溢れ出したゾンビたちの恐怖を据えた映画は、まるでゲームの中に紛れ込んだかのような印象的なショットと人物の動線に溢れている。ジョージ・A・ロメロの一連のゾンビ映画の尽きせぬ恐怖は、ある日突然、普通の人々がゾンビに襲われる怖さを描いている点だった。それと比べるとアリスが前作よりもあまりに強くなり過ぎたせいで、よく出来たホラー映画というよりも、ゴリゴリのアクション映画に様変わりしている感は否めない。一応T-ウィルスの生みの親であるチャールズ・アシュフォード博士(ジャレッド・ハリス)の幼い娘アンジェラ(ソフィー・ヴァヴァサー)を救い出すというミッションはあるものの、脚本も随分とお粗末である。「アリス計画」なる極秘計画を施されながらその美貌を保ったアリス・アバーナシーに対し、前作で堅牢な研究所を脱出した戦友であるマット・アディソン(エリック・メビウス)はその後ネメシス計画の餌食となる。同じ体内にT-ウィルスを移植してもここまで違うのかと思う姿そのものも相当に悲惨だが 笑、その壮絶な結末に獣の悲哀が漂う。『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』でドラキュラ伯爵を演じたトーマス・クレッチマンの小者ぶりも随分と気の毒だが、1時間30分強という尺、良くも悪くも続編ありきな物語構成など、B級映画としての手法は今作で固まった。

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