【第47回】『クレイジー・ママ』(ジョナサン・デミ/1975)

50年代のアメリカ南部を舞台に、
キャデラックに乗って縦横無尽に暴れ回る
女3世代の筋金入りのギャング一家の活躍を描いたロード・ムービー。

製作を務めたロジャー・コーマンはよほどバーカー一家に思い入れがあったようで、
『血まみれギャングママ』『ビッグ・バッド・ママ』と
この『クレイジー・ママ』と3本のバーカー一家の伝記を
いわゆる『〜ママ』ものとして製作している。

ただ3本目ということで、ストレートに史実に忠実な解釈とはなっておらず、
幾分ブラック・ユーモアを孕んだナンセンス喜劇の様相を呈している。

美容室を経営する家族は借金が払えず、半ば強引に追い出されてしまう。
仕方なく母親の生家のあるアーカンソーへと旅に出る。

しかしすぐに資金は底をつき、生活のために強盗を繰り返す。

映画はこの祖母・母・妊娠中の娘の3代の女性たちの生き方そのものを描きながら、
そこに行きずりの男連中が次々に加わり、次々と悪事を行っていく過程を淡々と描く。

カー・チェイス、強盗、セックス
この年代の娯楽作ならおよそ入っている要素を劇中に散りばめ、
コーマンならではのヒットの方程式に沿って描かれる。

2015年現在から観たら、70年代が憧れの時代のように
75年に撮られたこの映画の中にも、50年代への憧れが随所にみられる。

ロックンロールにリーゼント、クラシック・カーにレコード・プレイヤー
若き日の新人監督デミの憧れの世界が、思いっきり展開している。
街の看板を見ているだけでも、あの頃にタイム・スリップしたような錯覚に陥る。

往年の50'sメドレーも文句なしに楽しい。
サント・アンド・ジョニーやエブリ・ブラザーズ、
バレット・ストロングの当時のヒットが満載で、実に楽しい。

冒頭のガン・ショットの場面は、流石にショット割りが素人そのものだったが
中盤のバイク・レースの場面やカー・チェイスの場面はそれ程悪くない。

動物園の場面でも上手く縦の構図を使いながら、なかなか善戦している。
当時の職人監督のような活劇性はないが、まだ2本目の映画でこのクオリティは悪くない。

流石にこのナンセンス喜劇の設定からシリアスな作品に昇華させるのは厳しいが、
クライマックスなんてまるで当時隆盛を誇ったアメリカン・ニュー・シネマのようである。

一見、チープな発想で行き当たりばったりな行動を繰り返していたように見えた家族が
子供たちにしっかりと家族の未来を託す。明確な意志の見える最後だった。

後に『羊たちの沈黙』で観られたような大作家としての風格はまだないが、
コーマン門下生として非常に手堅い作りをしている。

『女刑務所・白昼の暴動』とこれと傑作『怒りの山河』と3本の作品をコーマンの元で撮ったデミ。
おそらくコーマン門下生の中では、相当好かれていたんだと思う。

主演のクロリス・リーチマンは
『明日に向って撃て!』や『ラスト・ショー』で順調にキャリアの階段を駆け上がり
今作では見事な『クレイジー・ママ』ぶりを炸裂させている。

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