【第46回】『サランドラ II 』(ウェス・クレイヴン/1985)

8年前に惨殺事件が起きた砂漠地帯で
バイクレースの参加者を乗せたバスがガソリン漏れのため立ち往生するはめに。
そこで8年前と同様の殺人ショーが始まる。

クレイヴン『サランドラ』の8年ぶりの続編。

ストーリーはまんま『サランドラ』を踏襲し、
前作の主役の一人で奇跡的に生還したボブ少年が
今も食人一族の恐怖が心理的トラウマとなっている描写から始まる。

しかしボブ少年が出て来るのはこの冒頭部分のみで
あとは食人一族の末の妹だった女の子が人間社会に戻り、
普通に思春期を迎えているというわけのわからない設定になる 笑。

ボブ少年はバイクレース用の新型燃料の開発に成功していて、
彼の作った燃料を使ってレースに出ようとする若者チームが惨殺の餌食になるのだが、
そもそもレース会場に行く途中に、
地図にない文明社会から孤立した核処理施設の跡地があるかという話だし、
食人一族の末の妹が仲間にいるんだから、普通に教えてやれよと思う 笑。

こういう辻褄合わせの強引な展開には、
クレイヴンのどうしようもない下手さ満点で失笑を禁じ得ない。

また前作から8年の歳月が経過し、
ホラー映画の流行の傾向も徐々に変化して行く中で
ここまでスプラッター映画に毛色を合わせなくてもいいのでは?
と思うほどの『13日の金曜日』の見事な模倣ぶりには笑ってしまう。

クライマックスの洞窟の描写は
前作と同じくフーパーの『悪魔のいけにえ2』からの影響も色濃く出ている。

要するにクレイヴンは相変わらずオリジナリティがさっぱりなのだ。
様々なホラー映画の要素を散りばめて、願わくばヒットさせたいという不純な動機しかなく、
そこにはホラー映画の歴史に残る作品を作ろうという気概がまったく見られないのである。

ただ、『スクリーム』シリーズに観られるような
セルフパロディの手法は今作で既に始まっていると言える。

主人公たちは怪物たちに襲われるよりも先に、自分たちが怪物になりきることで仲間を驚かす。
そういう描写を執拗に繰り返している。

若者たちは全員ことごとく馬鹿という人物設定も
『スクリーム』シリーズでセルフパロディ的により強調してやっている。

またカップルがセックスした直後に殺されるのも
クレイヴンの偉大なるワンパターンである。

その中で唯一感心したのは、主人公のグループの中に聾唖の女性を入れていること。
彼女の目が見えないことが、後にサスペンスを盛り上げる。

ただそれでも忍者屋敷の巨大仕掛けのような大味な設定には呆れた。
そもそも野蛮な食人族が繊細にピアノ線を張り巡らさないだろう 笑。

荒れた岩場をモトクロスで走る姿は迫力十分だが、
その生け捕り方のしょぼさはやっぱりクレイヴンだなと思う。

またシャワー・シーンもあれではせっかく作ったサスペンスの気配が台無しだろう。
あの場面一つ取っても、クレイヴンの力量は推して知るべしである。

前作で夜が明け、本格的な闘いが朝になったことに懲りているのか
今回のクライマックスは夜に行われる。

そこがせめてもの救いだが
また前回と同じ犬が大活躍するのにも笑ってしまった。
どんなに残忍な殺し方をしていても、結局犬一匹にやられてしまう。
この映画の中で一番強いのは間違いなくあの犬だろう 笑。

クレイヴンの犬に対する強い執着にも失笑を禁じ得ない。
ある意味、人間たちよりもよっぽど力を入れて撮っている。
きっと8年経ってるから別の犬なんだろうが、今回も本当によくしつけられていた。

クレイヴンにとっては
犬に対する執着の方が、脚本の辻褄合わせよりも大事なんだろう 笑。

そもそも文明の入り込まない地図にも乗らない場所で
彼らはいったいどうやって言葉を学んだのかも謎である。

まさか学校で読み書きを習ったのだろうか 笑?
普通はうめき声のみで、こんなに明快に英語を喋ることが出来るはずがない。

そういう間抜けな設定も全て引っ括めて、クレイブンらしいC級ホラーだといえる。
明らかにカーペンター、フーパー、カニンガム辺りと比べると志が低い。

【第40回】『サランドラ』(ウェス・クレイヴン/1984)

トレイラーの事故のため、砂漠の真ん中で立往生する一家。
だが核実感施設にほど近いその荒地には、
突然変異を起こした野蛮な食人一族が住んでいた。

1977年に製作されたクレイヴンの『鮮血の美学』に続く二作目。
これは明らかにフーパー『悪魔のいけにえ』のヒットを念頭に置いた
いかにも二番煎じなホラー映画である。

冒頭のガソリン・スタンドに立ち寄る設定が非常によく似ているし、
誰も助けにこないような荒涼とした土地で
次々に殺されていく場面もとても似通っている。

『悪魔のいけにえ』ではヒッピー崩れの若者たちが犠牲になったが、
こちらは鉱山を探しに来た元警察官の一家が次々に襲われる。

違うのはこちらは二匹の犬がいることくらいだろう。

『悪魔のいけにえ』では殺人鬼のテリトリーに迷い込んでしまい、
一人一人分断されることで悲劇に遭うが、
こちらはワゴン車ではなく、キャンピングカーに立て篭ることで事なきを得る。

文明に触れた一家に対して、
突然変異を起こした非文明的な原始的な俗物の理由なき残虐性が持ち味なのだが
時間が経過するごとに段々と恐怖心が薄れてしまう。

確かに最初に荒れた岩山に引きずり込まれた時の
殺人鬼の得体の知れなさは怖かったし、
それ以上に夜の闇に紛れる殺人鬼の気配があまりにも怖かった。

しかし彼らが赤ん坊をさらうあたりから、
結局彼らは食人一族でありながら、人間を食わない一家なんだと徐々に気付き始める。

元警察官で今は探偵をしているというお爺さんは丸焼きにされたし、
お婆さんもナイフで刺し殺されるのだが、
食人一族なのにどういうわけか死体はそのままの状態で立ち去ってしまうのだ。

自動車が横転して、キャンピングカーで車中泊しなければならない設定が
ホラー映画としては作劇上、好都合だったにもかかわらず、
主人公たちを殺さないまま、朝を迎えてしまう。

これは率直に言って、クレイヴンの致命的な計算ミスだろう。

また一晩明けると、前日には殺戮の恐怖の只中にいた家族が
彼らを倒しに山に向かうのには笑ってしまった。

食人一族なのに赤ん坊を食べずに一晩取っておいたばっかりに、
朝になったら赤ん坊を取り返すために今度は逆に主人公たちに反撃される。

ホラー映画として、こんな馬鹿げた話がかつてあっただろうか 笑?

またその反撃を企てる人間たち以上に、犬が最強なのにも笑ってしまった。
ホラー映画のモンスター役が、犬に殺されるなんてあんまりじゃなかろうか 笑?

そもそもあの無線のやりとりは一体何なのか 笑?
といちいちツッコミどころ満載で、ラスト30分には相当笑った。

この映画は77年製作ながら、日本公開は84年と7年も遅れを取ることに。
その結果、『サスペリア』にも『サンゲリア』にも抜かれ、
原題は『THE HILLS HAVE EYES』ながら、
どういうわけか『サランドラ』になってしまった 笑。

しかも公開時には「ジョギリ」なる凶器も生み出され、
いったいどんな武器なんだろうとドキドキして観に行ったら、
映画の中にまったく出て来なかった苦い思い出がある 笑。

クレイヴンは処女作の『鮮血の美学』がベルイマンの二番煎じで
2作目となる『サランドラ』は『悪魔のいけにえ』の二番煎じだった。

フィルモグラフィはオリジナリティのない凡庸なB級作家という印象だったが、
そのB級具合を逆手に取って、90年代には『スクリーム』シリーズでヒットを飛ばす。

最終的には、カーペンターやフーパーよりも大きな成功を収める
という非常にわけのわからない厄介な人である 笑。

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