【第449回】『追憶の森』(ガス・ヴァン・サント/2016)

あらすじ・結末に触れていますので、これから観る方はクリックしないで下さい

【第43回】『プロミスト・ランド』(ガス・ヴァン・サント/2012)

大手エネルギー会社の幹部候補である有能なスティーヴ(マット・デイモン)は、
マッキンリーという農場以外はなにもない田舎町に、
仕事のパートナーのスー(フランシス・マクドーマンド)とともにやってくる。

マッキンリーには良質のシェールガスが埋蔵されており、
近年の不況に大きな影響を受けた農場主たちから、
相場より安く採掘権を買い占めるためだった。

スティーヴは町の財政再建の救世主として迎えられたが、
ある人物の登場により、予期せぬ障害に行く手を阻まれる。

『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』のサントとデイモンが再びタッグを組んだ作品。

冒頭の水中かと思うと、お湯を張った水道だという演出がとても上手い。
溺れるような状況から主人公は脱出するんだと、暗喩的イメージでそれとなく伝える。

相変わらず人物の動線をしっかり煮詰めたカメラ・ワークが素晴らしい。
走り出す車を空撮でじっくり捉えた映像とロング・ショットの組み合わせも良い。

マッキンリーの風景ショットはもう少し欲しい気もするが、
実に見事な映画の立ち上がりになっている。

映画はアメリカで社会問題になっているシェールガスの採掘権を巡る問題を
買い叩く側、農場主、環境活動家の三つ巴で描くのは良いのだが、
肝心のストーリーがイマイチはっきりしない。

そもそもの問題として、採掘権を買い取るために
農場主を言葉巧みに説得するしたたかなエリート役に、
マット・デイモンが果たして適役だったのかが最後までよくわからなかった。

大手エネルギー会社で、この若さで幹部候補にまでのぼりつめる男というのは
恐らく相当したたかな話術を持ち、人心掌握術にも長けた男でなければならないはず。

その辺りの幹部候補なりの凄みが前半部分から感じられなければ
三つ巴の構図は成立しないだろう。

地元の老教師の明快な理論には反論すら出来ず、
酒場でショットを一気呑みしたことで翌日の集会に遅刻し、
早朝、自分で運転しようとすれば上手くいかない。

この描き方だと、はっきり言って典型的なダメ人間でしかない 笑。

むしろ主人公と相対する環境活動家の男のしたたかさの方が真っ当な描き方がなされている。
率直に言って、この2人の描写が逆だろうと思う。

あとはローズマリー・デウィット扮するアリスの存在は不要ではないか?

そもそもこれだけ有能な主人公ならば、既にパートナーがいるはずだし、
こんな田舎町の女に酒場に会っただけで一目惚れしないだろう 笑。

買収する側の主人公に対して、環境活動家という対立する人間が現れるのはわかるが、
仕事上の敵が、同時に恋敵にもなるという脚本は実に幼稚で痛々しい。

主人公がアリスに対して、「僕は悪い人間じゃない」と言う場面が二回来るのだが、
あまりの幼稚さに笑ってしまった。

そういう脚本上の綻びがいくつも見られるため、物語に入り込めない。
もっとシンプルに対立軸を描いて、後はそれを演出するだけの脚本にまだまだなっていない。
未整理なまま、消化不良のまま走り出せば映画は真に魅力を発揮出来ない。

あっと驚くクライマックスも、
そこに至るまでの演出が粗雑なため、さっぱり乗れなかった。

クライマックス前の酒場のシーンで、地元の人間たちに大見得を切った主人公が
大した葛藤の要因もなく、あのような選択をするとは私にはさっぱり理解出来ない。

ただクライマックスのレモネードの女の子と主人公のやりとりは素晴らしかった。
ああいった細かい演出の妙はガス・ヴァン・サントの上手さが光る。

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