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【第811回】『サイン』(M・ナイト・シャマラン/2002)


 ペンシルヴェニア州バックス郡、広大なトウモロコシ畑、窓枠に切り取られた庭先のブランコが不気味に揺れる。強い風が吹く田舎町で、グラハム・ヘス(メル・ギブソン)は悪夢のような大汗をかきながら飛び起きる。同じ頃、離れに住む少し年の離れた弟メリル・ヘス(ホアキン・フェニックス)も運命のシンクロニシティに導かれるように飛び起きる。互いに庭先に出て来た兄弟は、部屋に不在の2人の子供たちを探し回る。トウモロコシ畑をかき分け、妹ボー・ヘス(アビゲイル・ブレスリン)を最初に発見した兄弟は、ボーが指差した方向に一目散で走って行く。呆然と立ち尽くす長男モーガン・ヘス(ローリー・カルキン)の前には、曰くありげなミステリー・サークルが拡がっていた。グラハムは半年前まで牧師をしていたが、ある事件を境に神が信じられなくなり、今はトウモロコシ農家として生計を立てていた。額縁に入れられた幸せな頃の家族写真、長男は小児喘息持ち、妹は水に神経質になる女の子。謎のミステリー・サークルが見つけた夜から2頭の愛犬は突如、凶暴化していた。助けに呼んだ地元警察のパスキー(チェリー・ジョーンズ)はアメリカ全土で同じような現象が起きているとグラハムに警告する。当初はライオネル兄弟(マイケル・ショーウォルター)の仕業だと思っていた兄弟は、一瞬で3mもある屋根の上に昇った怪しい人影に疑心暗鬼に陥る。そんな折、テレビのチャンネルがミステリー・サークルのニュースしか発信しなくなる。

 明らかにH・G・ウェルズの傑作SF小説『宇宙戦争』をモチーフにした物語は、侵略者に抵抗しようとした政府側の描写もあるが、今作はクライマックスまでペンシルヴェニアの片田舎のある一家に起こる危機にのみ注力する。マクロの情報はテレビのニュースでしか知らされず、4人家族のミクロな光景を切り取る。その意味では大味だったローランド・エメリッヒ版の『インデペンデンス・デイ』よりも語り口を絞ることで、半年前の母親の死によりバラバラになりそうな家族の再生物語としても大いに機能している。まだ幼い兄妹を抱えながら、少し年の離れた兄弟は互いに妻(義姉)の死を受け入れられないまま、互いに傷つき、傷を抱え込んだまま、2人の子供と向き合う。愛犬フーディーンのお漏らし、トランシーバーに微かに聞こえる交信音、誰もいない闇に吠えるイザベルなど、M・ナイト・シャマランお得意の曰くありげな描写の数々でクライマックスまで観客の緊張を持続する。監督自身のチョイ役での出演も今作ではただのエキストラに留まらず、主人公のトラウマの原因を誘発する男として登場し、なおかつ貯蔵室に犯人の1人を匿っているという展開が心憎い 笑。問題は途中までは緊張感を最大限に持続させながらも、実際に登場した侵略者の何とも微妙なルックスに尽きる 笑。予告編を観て、ワクワクしながら初日に駆けつけたが、その瞬間、スクリーンの前で初めて失笑とため息が漏れた 笑。とはいえメル・ギブソンとホアキン・フェニックスがソファーに並び、偶然と必然の可能性について思考する場面は問答無用に素晴らしい。ゲロとガムを引き合いに出すホアキンの飄々とした語り口はその後、彼の代名詞となった。

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