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【第814回】『それでも恋するバルセロナ』(ウディ・アレン/2008)


 アメリカ人のヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)は親友同士。ヴィッキーは修士論文を仕上げるために、クリスティーナは短編映画撮了を楽しむために、2人は夏のスペイン・バルセロナへ旅行に来ていた。何かとウマが合う2人だが、ただ一つ恋愛観だけはまるで違っていた。慎重派で貞淑なインテリであるヴィッキーに対し、クリスティーナは肉食系で自由奔放、SEXも含め直感を信じる女だった。2人の関係性は『マッチポイント』のクロエ・ヒューイット(エミリー・モーティマー)とノーラ・ライス(スカーレット・ヨハンソン)の関係性にもトレース出来るし、アレンの映画においては両極を司る2人の女性は往々にしていつも出て来る。ガードの硬い貞淑なヴィッキーは婚約者ダグ(クリス・メッシーナ)との結婚を控えている。親友クリスティーナの自由奔放な態度に対しても、当初は姉のような立場で上から目線で語りかけるヴィッキーの姿に、クリスティーナは一切悪びれる様子もない。ホームステイ先のホテル、ヴィッキーの遠縁のジュディ・ナッシュ(パトリシア・クラークソン)と夫のマーク・ナッシュ(ケヴィン・ダン)夫婦は2人を笑顔で向かい入れる。昼間は別行動、夜は一緒に過ごそうと約束した2人は、思い思いの時間を過ごす過程で、妻に暴力を振るい、離婚した画家のフアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)と出会う。

 女と見れば手当たり次第に口説くフアン・アントニオのプレイボーイっぷりにヴィッキーは嫌悪感を隠さないのだが、案の定、クリスティーナは男の誘いに軽々しく乗る。「カタルーニャの国民性について」という名の修士論文を書き、いずれはアメリカで教師になろうとしているヴィッキーは自身の貞操観念を誇りながら、上から目線で親友に助言をする。しかし肉食系男子のフアン・アントニオの行動パターンは2人のアメリカ系女子の斜め上を行っている。今作のフォルムは古くはエリック・ロメールやジャック・ロジエ、近年ではホン・サンスやジョー・スワンバーグのような半径150cmの恋愛映画をを好む層にはどストライクに違いない。すっかり老成したウディ・アレンの真に力が抜けた物語は、個人の倫理観よりも偶然の出会いに重きを置いている。観念よりも衝動が優先され、ロジックよりもエモーションが上回る物語はフアン・アントニオの存在を物語の中心に置きながらも、女たちの感情のズレを徐々に浮き彫りにする。女同士の台詞はあくまで口をつぐんだ言葉であって本心ではない。その証拠にヒロインたちはエラーのような恋愛物語に没入し、素敵な男の深淵に触れたところで、我を取り戻す。一見、緊密な三角関係に見えた物語にもう1人の女マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)が登場するところから、物語は一気に息を吹き返す。70歳を過ぎて妙に肩の力の抜けたウディ・アレンの突き放すような登場人物への客観視が絶妙な味わい深い佳作である。

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