DUFF "BLACKSUN"ライナーノーツ全文掲載

いよいよ本日発売!!
仕事が多忙につき、メールでのやり取りが難しいと判断しましたので
急遽、私の書いたライナーノーツ全文テキストをここに共有します。
アルバムを聴きながら、読み進めて頂くとアルバムの理解度が増すことと思います。
是非とも全国のレコード屋、配信にてDUFFの新しい音源をチェックしてみて下さい。

 DUFF is Back!!久しぶりに威勢の良いあの男がシーンに帰って来た。語り継がれる伝説の5W1Hを経て、北関東スキルズにコア・メンバーとして参加。グループでは初めての全国流通だった2011年の『Buffalo Report Code』(名盤!!)に前後し、4枚のストリート・アルバム『ILLAKANTO』シリーズと裏盤1枚を発表!!グループの多くの楽曲を手掛けることになるが、その活動と並行して、ソロ作『BREATH OF STEEL』、『MOST FAMOUS UNNAMED』とよりコンシャスで内省的なアルバムをドロップし、ヘッズを熱狂させて来た。特に2007年にリリースされた『BREATH OF STEEL』で垣間見えたリリシストとしての存在感と、当たり前の日常を切り取る情景描写は、来たるべき新たな才能を予感させた。夜な夜なセッションで自問自答を繰り返すその旺盛な創作意欲は、HIP HOPの名の下にまったく衰えることなく、多作であることで逆に、自らの荒削りな表現スタイルをますます純化させてきた。2007年の『BREATH OF STEEL』からの怒涛のリリース攻勢は、トライ&エラーを繰り返すこの男の魅力を内外に提示した。

 そのスタイルが大きく変化したのは2011年にリリースされた『GRIME CITY VOL.1』からである。全曲日本語詞によるGRIMEを売りにしたこのアルバムは、ロンドン・アンダーグラウンドの息吹を北関東に直輸入した最初期のアルバムとして歴史にその名を刻む。HIP HOPとGRIME、シーンにはまだまだ理解がない中、この男の中に垣根はない。GRIMEという新しいフィルターを通して、もう1度「ラップ」という表現スタイルを突き詰めた『GRIME CITY VOL.1』は 再び熱狂的に受け入れられた。その後、離合集散を繰り返したグループの活動休止、拠点とした「Freestyle Cafe 354」の閉鎖など環境の変化に見舞われたDUFFは、長崎のビートメイカーirishと組んだ『12 QUESTIONS, 1 ANSWER』、大阪のトラックメイカーchop the onionとセッションした『NIGHT CRUISE』という2枚のコラボレーションを経て、地下深くに潜って行く。栃木・宇都宮の「B-Lines Delight」クルーのDJ NEGATINとコンビを組み、『SUGOI TEION』と『Party Style』という2曲のキラー・チューンをドロップ。自主レーベル『ARTCORE』を主宰し、北関東のビートメイカーたちが一同に集うDOPEなコンピレーション『ART OF VILLAIN』を昨年発表!!しかし珠玉のインスト・ビーツのみを抽出したコンピレーションだったアルバムでは、最新型のDUFFのラップを聴く機会は無かった。

 そこに満を辞して今作の登場である。キラー・カッツ『SUGOI TEION』、『Party Style』を除けば、DUFF x CHOP THE ONIONの『NIGHT CRUISE』から実に3年半ぶりの純然たるレペゼンHIP HOPアルバムである。出来立てホヤホヤのアルバムを30回ほど聴き通しての感想だが、これまでのDUFF関連アルバムの中でも黒さは随一と言っていい。「漆黒のグルーヴ」という表現がシックリ来るいぶし銀の全15曲のビートはどれも粒揃いで、曲順を含めたトータルの完成度も極めて高い。アルバムのド頭にそびえ立つ新曲M-1「ブラックサン」や若干20代前半のHeavy moon musicレーベル所属Hiwaをトラックメイカーに迎えたM-2「ジェノサイド・ドラム」、西海岸セッションの進化系である<ロウ・エンド・セオリー>とも親和性の高いM-9「ビューティフルカントリー」など、今年作られた出来立てホヤホヤの音源を要所に散りばめながら、同時に溺死との懐かしいセッションである2007年のM-5「盲目ファンク」や同じくアスラとの2007年の音源M-8「スーパーストゥーピッド」など、何故これを今までドロップしなかったのかと思うような隠れた名曲が理路整然と並んでいる。

 先行配信シングルとなったM-3「日常LOVERS」は、LOOPしたサンプリング・ソースを基調としながらも、倍速で刻まれたハイハットがひときわ挑発的な北関東からのJUKEビートへの返答のようなナンバーだ。幻のKITAKANTO SKILLZメンバーとの2008年のセッション作M-6「その男たち貧乏につき」もヘッズには嬉しい。自らの住む街をリリックに綴ったM-4「佐野」は栃木と群馬の狭間に根を張り続け、桐生=KILL YOU CITYの強烈な磁場に支えられた北関東ヴァイヴス溢れる名曲である。まるで故J-Dillaのような三拍子を用いた変わり種であるM-8「フレッシン」も夜な夜なセッションを繰り広げるDUFFの進化が感じられる。このように大学時代を過ごした仲間たちや北関東人脈とのセッションを要所に配しながらも、世界各国のビートメイカーたちとやり取りした楽曲群は世界を見据える。デンバー在住のニムロドビーツを迎えたM-1「ブラックサン」、M-11「アルカディア」、M-12「ジャズバグ」、NYの作曲家eEzyを迎えた先行シングルのM-3「日常LOVERS」、M-14「ブラックムーン」、嗜好のインストM-15の「ジェントルマン」、ベルリン在住のトラックメイカーG4SOM4TとコラボしたM-10「マッチ売りのMC」、M-13「NOT OBEY」など日本語ラップの範疇には収まり切らないワールドワイドなセッションが楽しめる。個人的に本作が一番似合うのは、冬の凍てついた寒さからゆっくりと太陽が出る明け方だと思うが、各々のライフスタイルに併せて楽しんで欲しい。何十回も繰り返し聴いてこそ真価を発揮する2017年最初の傑作アルバムの誕生だ。

 日本語ラップは2000年代に入り、長らく冬の時代を迎えていたが、2015年あたりからその潮目が急速に変わりつつある。CMで著名人による耳馴染みの良いラップ・ナンバーを聴かない日はないし、『UMB』や『KOK』『戦極MCバトル』などアンダーグラウンドで行われていた熱いバトルに反応し、『フリースタイル・ダンジョン』や『高校生ラップ選手権』におけるTVのフック・アップにより、マイクを握る若者の裾野は着実に拡がりつつある。国内唯一のHIP HOP雑誌だった『Blast』の廃刊以降、地下に潜った日本語ラップ批評も『ユリイカ』『ELE-KING』等で少しずつ活気を取り戻しつつある。KOHHが宇多田ヒカルのアルバムに客演したのも記憶に新しい。いとうせいこうやTINNIE PUNX、MAJOR FORCEレーベル創設までの80年代中期〜後期を第1次日本語ラップ・ブームとし、Buddha BrandやRhymester、KGDR(キングギドラ)、雷家族、Microphone Pagerら「さんピン世代」の台頭とスチャダラパー、キミドリ、四街道ネイチャーら「LB勢」が躍進した第2次日本語ラップ・ブーム、Shing02やTHA BLUE HERB、TOKONA-Xらが活躍し、東京一極集中的なシーンから地方へと裾野が拡がった時期を第3次ブームとするならば、現在の活況はさながら第4次日本語ラップ・ブームの様相を呈している。

 しかしTVを中心としたいわゆる電通メディアによるドーピング操作は、熱が生まれるのも早いが同時に潮が引くのも早い。今の日本語ラップ・ブームが下火になった時、再びMCたちの自然淘汰が始まる。私が昨今のバトルMCの過剰な持ち上げられ方を象徴していると思うのは、彼らの書く経歴(Profile)である。どのMCも各地区のMCバトルでベスト8や準優勝などの実績を経歴の中に書き連ねているが、それは戦績であって経歴ではない。MCに求められているのは一過性のバトルの順位ではなく、ソロで何枚、グループで何枚アルバムをリリースしたかという客観的な事実だけだ。盤が売れない時代などと方々から嘆き節が聞かれる2016年、日本語ラップのシーン自体も即時性やインタラクティブ性を同時に強め、観客にとって有難いエンターテイメント化を見せているが、MCにとってレコードという記録媒体の価値は1mmも揺るがない。配信シングルを除けば、実に3年半ぶりのDUFFの新譜を聴きながらそんなことを感じていた。この男の創作意欲は一度火がつくと止まらない(はずだ)。GRIME方面での多面的な活動も含め、この男の次のステップが楽しみでならない。

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