【第806回】『ワイルド・スピード MEGA MAX』(ジャスティン・リン/2011)


 前作『ワイルド・スピード MAX』において謎の麻薬王ブラガを逮捕し、FBIに貢献したブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)だったが、恋人ミア・トレット(ジョーダナ・ブリュースター)と共に、ロンポック連邦刑務所行きの護送車に乗せられたドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)を助け出したことで、3人は国際指名手配される。それから数日後、ブライアンとミアの姿はブラジルにあった。急勾配に家々が立ち並ぶリオデジャネイロのスラム街、潜伏先を指南するのは、ドミニクの『ワイルド・スピード』時代の相棒で、ブライアンに裏切られたヴィンス(マット・シュルツ)だった。エクアドルから合流したドミニクと共に66年式フォード・GT40を奪還したブライアンとドムは、リオデジャネイロで最も強い権力をもつ悪徳実業家エルナン・レイエス(ジョアキム・デ・アルメイダ)の数百億ものマネー・ロンダリングの流れを記録したマイクロチップを奪ったことで、一転してブラジルの闇組織に命を狙われることになる。そして国際指名手配となった彼らの逃走劇には、アメリカDSS(外交保安部)の捜査官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)とエレナ・ネベス(エルサ・パタキー)の捜査の手が徐々に近付いていた。

 メガ・ヒットを記録した『ワイルド・スピード』シリーズ第五弾。今作から遂にアメリカ国家を守る立場だったブライアン・オコナーが野に下り、ドミニク・トレット同様の悲しき逃亡犯になる。代わりに彼らを執拗に追い回すのは、凄腕捜査官のルーク・ホブスに他ならない。マイアミからリオデジャネイロへの逃亡劇の果てに、エルナン・レイエスの100億円もの紙幣を強奪するために、かつての最強の仲間たちをリクルートする中盤の展開は問答無用に素晴らしい。複線として、導入場面の悪阻から新しい家族が出来たことを告白されるブライアンは犯罪者と一般人の間で、立派な父親になれるか自問自答する。シリーズ3作連続の登板となったジャスティン・リンの演出は相変わらず、走り屋としての彼らの根源的な活動よりも、人間ドラマや作戦の遂行に重きを置いているものの、列車と並走する高級車強奪、リオの民家の屋根伝いの逃走劇、銃撃戦など、部分部分に入れられた活劇の肉付けがそれぞれに素晴らしく、シリーズ最高傑作のカタルシスを誇る。中でもヴィン・ディーゼルとWWEのロック様ことドウェイン・ジョンソンの肉弾戦の迫力はシリーズ屈指の魅力を誇る。胸板の厚さでも上腕筋の説得力でも明らかにヴィン・ディーゼルは迫力負けしているのだが 笑、ドムの差し伸べた手にホブスががっちりと握手を交わす中盤の展開は、90年代のマッチョなアクション活劇ファンには心底堪らない展開だろう。

 シリーズ最高の相棒たち、『ワイルド・スピード』のヴィンス、『ワイルド・スピードX2』のローマン・ピアース(タイリース・ギブソン)とテズ・パーカー(クリス・"リュダクリス"・ブリッジス)のナイスなソウル・ブラザーぶり、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』のリコ・サントス(ドン・オマール)と「なんでんかんでん川原社長」ことテゴ・レオ(テゴ・カルデロン)のレゲトン・マリアッチ・コンビ、ハン・ソウルオー(サン・カン)の再登場、『ワイルド・スピード MAX』のジゼル・ヤシャール(ガル・ガドット)の妖艶さと新たなロマンスの行方など、チーム・メンバーたちの枝葉の部分までしっかりと丁寧に描かれている。相変わらず敵役にこれと言ってパッとするような悪役が出て来ないのは難点だが、ラストの金庫を引きずりながらの数十kmの並行走行には流石にバカ笑いが止まらなかった。心底バカな旅路の果てに、チーム・ドムの面々には束の間の幸福が訪れるが、その幸せは長くは続かない。ラストに出て来たまさかの人物の再登場には唖然とさせられた。シリーズ3,4の低調さを覆した今作は、シリーズ1~4と6~8を繋ぐ見事なターニング・ポイントとなったシリーズ最高傑作である。

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