【第838回】『コップランド』(ジェームズ・マンゴールド/1997)


 ニュージャージー州ギャリソン郡の閑静な住宅街、ジョージ・ワシントン橋を境にして川向こうにニューヨークを臨む地域に「コップ・ランド」と呼ばれる警官ばかりが居住する地区がある。ニューヨークに凶悪犯罪が多発した1970年代、白人警官たちは自分たちの家族を安全な場所に住まわせるためにこの地に「コップ・ランド」を作った。ギャリソン郡に住む警官たちの実質的なまとめ役であるレイ・ドンラン警部補(ハーヴェイ・カイテル)は影の権力者としてやりたい放題を繰り返す。ある日の夜、警官しか入れないBAR「4 ACE」、37分署のフレディ・ヘフリン保安官(シルヴェスター・スタローン)はピンボール・ゲームに夢中になるが、同僚のゲリー・フィッグス刑事(レイ・リオッタ)の手元が気になって仕方ない。すっかり酩酊したフレディはコイン・パーキングの売上金を地面にぶちまけてしまう。親友のフィッグスに支えられ、1人家へと帰るフレディはふと横に広がる憧れのネオン街を見つめる。ニューヨークの美しい夜景に憧れを抱く初老の男の前に鹿が飛び込み、びっくりした男は右にハンドルを切る。鼻の骨を折り、呆然とした表情でニューヨークの夜景を見つめるフレディの真上である事件は起こる。

 ニューヨークの街を舞台にした物語、『ミーン・ストリート』のハーヴェイ・カイテルとロバート・デ・ニーロ、『グッド・フェローズ』のレイ・リオッタ、そして『レイジング・ブル』のキャシー・モリアーティの共演など、今作でジェームズ・マンゴールドはマーティン・スコシージへのリスペクトを隠そうとしない。ファミリーを重んじるレイ・ドンラン警部補は警察でありながら罪を隠蔽し、ファミリーの流儀で匿おうとする。レイの強権に対し、37分署を管轄し10年になるフレディ・ヘフリン保安官は何も言えない。アメリカでは法の名の下に国民には自由が与えられているが、この街では一貫してレイ・ドンランの顔色を見て行動しなければ生きられない。正義感に熱い新人警官シンディ・ベッツ(ジャニーン・ガラファロー)は110kmもの速度超過のレイを取り締まろうとするが、事勿れ主義のフレディに止められる。ギャリソンに赴任して10年、片耳が聞こえないフレディはNY州警察に憧れ、この10年で3度ニューヨークの刑事になることを志願して来たがその度に弾かれる。内務調査局の監察官モー・ティルディン警部補(ロバート・デ・ニーロ)は彼の出世欲を出しにして、かつての警察学校時代のレイを検挙しようとするが、一切のエビデンスがないまま途方に暮れる。ラスト10分のアクション描写はスタローン・ファンには物足りなさが残るものの、プログラム・ピクチュアとしては十分上出来であろう。TVドラマのような紋切り型の凡庸な構図だけは終始気になるものの、ジェームズ・マンゴールドの才能は当初からB級プログラム・ピクチュアの監督としてはあまりにも優秀だった。

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